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抜いた歯は生えてきません.削った歯は元に戻せません。歯科治療は両刃の剣であることを理解して治療を受けてくださるようおねがいします.

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リグロスの問題点


リグロスとは

 健康保険の適用になった歯周病治療薬、リグロスに関する質問をいくつかいただきました.

 リグロスというのは歯周組織の再生治療をうたって1年くらい前に発売された薬です.

 手順としては、歯周病に罹患(りかん)した歯の歯肉を切開して剥離(はくり)したのち、歯石などの汚れを取り除き、露出した根面に薬液を塗布して最後に粘膜を縫合(ほうごう)して施術を終えます.

 リグロスは組換え型ヒトbFGF(塩基性線維芽細胞成長因子)を有効成分とした薬剤です.
 線維芽細胞成長因子(FGF)というのは、創傷治癒や血管再生に関係する成長因子の一つで、体内で必要に応じて産生されているものです.
 その成分を身体の外で人工的に製造したものがこのリグロスです.

 歯肉剥離搔爬術(しにくはくりそうはじゅつ=フラップ手術)のときに根面に塗布することで、創傷治癒の過程で歯周組織の再生を促すというのがこの薬剤の主たる目的です.これは幼弱豚の歯胚より抽出されたエナメルマトリックスタンパクを主成分とするエムドゲインと同様の効果をねらっているということになります.


保険適用の薬剤

 リグロスとエムドゲインの大きな相違は、健康保険が適用される薬剤か否かといういことです.

 保険診療でも歯肉剥離搔爬手術(フラップ手術)は認めてられていますが、エムドゲインの使用は認められていないのでその施術に一歯あたり何万円という費用がかかってしまいます.

 しかし、リグロスは健康保険で認可された薬剤なので、5,6千円の負担金でその処置を受けることができます.

 高価な薬剤が保険の適用になることは朗報なのですが、一方でいくつか心配な事があります.


適応症は限られている

 リグロスの保険適用で私が危惧していることが二つあります.

 ひとつは歯周支持組織の再生治療薬といううたい文句で発売されていますが、その効果はそれほど期待できないということです.

 歯槽骨の再生をうたっている薬剤の効果は限定的で、一般に”歯槽骨再生”という言葉から連想するような効果が期待できるわけではありません.

「えっ!?歯周病なのですか?」
というような歯のレントゲン的な陰影が変化するかしないかといった些細なレベルなのです.

 重度歯周病の患者さんが望んでいるような臨床レベルの効き目があるわけではありません.リグロスに過剰な期待をよせてしまうと、その結果に対する落胆は大きくなります.

 リグロスの適応症はエムドゲインと同様非常に限られており、①垂直性骨欠損、②下顎臼歯部の2 級分岐部病変、③上顎臼歯部頼側からの2級分岐部病変などでその効果が期待されています.文字で書くとものものしいのですが、これらの病状は自覚症状がほとんどなく、歯槽骨がごく一部だけ吸収した軽度のものです.

 ①の垂直性骨欠損は従来の歯周病治療でも歯槽骨の改善ができるます.
 下の写真は垂直性骨欠損の症例ですが、ブラッシングを中心としたオーラルフィジオセラピーで歯槽骨は改善してきました.

 ②と③の2級分岐部病変というのも、きちんとしたブラッシングをしていれば、ほとんど問題のないレベルの歯周病です.


垂直性骨欠損の症例

45歳の男性です.
第二大臼歯の近心(前側)に垂直性骨欠損ができています.

ブラッシングを中心としたオーラルフィジオセラピーのアプローチで歯槽骨は改善してきました.
もちろん歯周外科やリグロスなどの薬剤は使用していません.
第二大臼歯の近心(前側)が黒くなっています().
このような状態を垂直性骨欠損といいます.
1年以上経過した時のx線写真です.
第二大臼歯の近心(前側)の黒かったところが白っぽくなっているのがわかります(

歯槽骨歯槽骨が改善していると考えられます.


過剰治療の恐れ

 リグロスの保険適用で危惧されるもう一つのことはこの薬剤の濫用です.
 歯周病を治すためではなく、医院経営のためにこの薬剤を利用する歯科医師がいるのではないかということです.

 前述のようにリグロスの適応症は限られているのですが、それを無視してフラップ手術が必要のない歯まで歯肉を切ったり、塗っても効果が得られない歯槽骨吸収のはなはだしい症例にまでリグロスを適用する歯科医が出てくる可能性があります.

 フラップ手術のときにその薬剤を塗布すれば、手術の費用とは別に1万円程度の診療報酬のアップが認められるので、どうせ歯肉弁を開いたのなら、行きがけの駄賃に薬剤を塗布しておこうという歯科医がいてもおかしくないのです.


リグロスは必要ありません

 
 歯周外科の項でも書きましたように、歯周外科手術は必要ありません.
 私たちの歯周病治療・オーラルフィジオセラピーを行えば、グラグラで歯槽骨吸収がはなはだしい症例でも歯槽骨が再生します.
 歯槽骨の再生にはリグロスもエムドゲインも歯周外科手術も必要ありません.
 細菌因子と宿主因子と力の因子をコントロールすることで、生体の自然治癒力で治していくものです.

 リグロスによる治療は痛い思いをして、お金を払うだけで、よいことは一つもないというのが、私の考えです.




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