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我包帯す、神癒し賜う(アンブロワーズ・パレ)





アンブロワーズ・パレ(1509〜1590)
 “我包帯す、神癒し賜う”という箴言はアンブロワーズ・パレ(1509〜1590)が残したものだといわれています.

 アンブロワーズ・パレは近代外科学の創始者といわれる人です.

 16世紀、絶対王政下のフランスで、度重なる宗教戦争に外科医として従軍し、医学の発展に多大なる功績を残した「床屋医者」です .

 「床屋医者」とは、床屋の生業とともに、外科処置を行う職業のことで、当時「医者」というのは内科医のことを意味していて、傷の手当てなどは「床屋医者」の仕事でした.

 「床屋医者」は「医者」よりも一段低く見られる存在でしたが、パレは「床屋医者」として外科技術の発展に多大な功績を残し、その地位を高め、後に「近代外科の祖」といわれるようになりました.

1552年、スペインとフランスの間の戦いで、負傷兵を手術するアンブロワーズ・パレ
 片山先生はこのパレの箴言で我々に二つのことを伝えようとしていました.

 『歯医者は補綴物を入れることで病気を治せると思っているが、実はそうではない.医者が病気を治すのではなく、患者さんが持っている治ろうとする力、自然治癒力(自然良能)を上手に引き出すことで、はじめて治すことができる』ということがその一つです.

 たとえば歯周治療において、歯科医療者がスケーリング・ルートプレーニングをし、歯周外科を施し、PMTCを行っても、患者さんのプラークコントロールの実践がともなわなければ成功はおぼつきません.

 さらにプラークコントロールができたとしても、生体の抵抗力が落ちていれば、健康な歯周組織を獲得することは困難です.

 したがって、歯科医療者は、患者さんがきちんとプラークコントロールできるよう指導する能力を身につけ、患者さんが生体の抵抗力をつけられるよう導く技量をもつ必要があるということになります.

 『歯の実質欠損は自然治癒力がない(むし歯を除去してできた穴は皮膚の傷のようにはふさがらない)ので、歯科治療における包帯すなわち補綴物は長持ちしなければならない』ということもこの言葉から導き出されます.

 包帯である補綴物が20年、30年持つことで、初めてハイシャは歯医者となれる.すぐとれてしまったり、二次齲蝕ができてしまうような治療をするものは「ハイシャ」ではなく「ハカイシャ」であるという教えです.

 片山先生が口癖のように仰っていたのが「長持ち」です.

 修復物が長期間機能し、歯周病が20年、30年と再発しないことが、歯科治療成功の条件となります.


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