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歯を削ってかぶせる冠やブリッジを補綴物(ほてつぶつ)といいます. 歯科治療の歴史はこの補綴物の歴史と言って過言ではなく、補綴物を入れるために、見た目の良い補綴物のために抜く必要のない歯まで抜かれてしまっているのが現実なのです. |
このページの目次 |
*補綴物を入れる歯は弱っている *技量の劣る歯科医は抜歯が早い *補綴を治療の中心に据えると抜歯が早まる *補綴物は弱った歯を守る手段 *抜歯は歯科医の敗北 |
歯科医療の始まりは入れ歯を入れてものを噛めるようにすることでした. 現在の歯科医療も基本的にはその考え方に変わりはありません. したがって、クラウンやブリッジやインプラントを入れること、白い歯で見た目をよくすることが歯科治療のゴールだと考えている人がほとんどです. なんでも食べられて、審美的にも満足のいく補綴物を装着することが歯科治療の目的であることは間違いありません. しかし、口でいうほど簡単ではないのが現実です. 補綴物を装着する歯はもともとむし歯や歯周病で弱っていた歯です. そのような歯に補綴物をいれても、むし歯で失った歯質が回復するわけでも、歯周病で喪失した歯根膜が取り戻せるわけでもないからです. |
当たり前のことですが、むし歯や歯周病に罹患した歯は、健康な歯に比べその健康度は格段に劣ります. いくら一生懸命メインテナンスしても、補綴物をいれた歯の寿命は健全歯に比べて短くなってしまうのは当然です. ましてや重度の歯周病や残根状態の歯に補綴物を入れても長くは持たないと考える方が普通でしょう. クラウンやブリッジなどの補綴物を入れても、すぐにとれてしまったり、短期間で痛みがでたりしたら、その歯医者は腕が悪いということになってしまいます. したがって、補綴物を入れてもすぐとれたり痛みが出たりしてしまいそうな歯は抜歯してしまうほうが、腕の良い歯医者への近道ということになります. 補綴物を装着した歯がもつかもたないかは、歯科医の技量や技術力、経験、知識によってまったく違ってきます. したがって、その歯科医が自分にはあまり長持ちさせることができないと判断すれば抜歯ということになってしまいます. つまり技量の劣る歯科医、知識のない歯科医は抜歯が早くなるわけです. |
健康保険では「その補綴物が2年以上持たないと考えられるときは抜歯」という考え方があります. したがって、健康保険で補綴物を入れる歯科医は、保存が難しそうな歯はどんどん抜いてしまうことになります. 一方、セラミックなどの自費治療では健康保険のようなしばりはありませんが、何万円もする補綴物が数年でだめになってしまっては患者さんが納得してくれません. そこで、こちらも重度の歯周病の歯や破折歯や膿瘍を形成したような将来が不安視される歯は積極的に抜歯してしまうことになります. 補綴物を歯科治療の中心に据えてしまうと、その歯を抜歯するか否かは、いれた補綴物がどのくらい持つかがその判定の基準になっています. |
私たちは歯科治療のゴールを補綴物装着とは考えていません. 歯をいたわり、なるべく歯を大切にし、生体に適応させて長持ちさせることが歯科治療のあるべき姿だと考えています. その歯を保存するためにはどのようにしたらよいかということを考えます. そして、その歯を守っていくにはどのような補綴物が適しているのかを考えます. それは機能回復を目的とした補綴物ではなく、歯を守る手段としての補綴物なのです. ガンや心臓病になれば今までのような生活を継続することは困難になります. 重病の場合は入院して絶対安静が必要なときもあります. そして、たとえ病気が治っても、元とまったく同じように働くことができなくなることもあります. 歯も同じです.重度の歯周病や進行したむし歯の場合は、元のように何でもばりばり食べられるように回復することは難しくなります. 以前のように一人前に働くことは無理になる可能性が高くなります. 半人前程度しか働けないかもしれません.いやほとんど働けなくなるかもしれません. しかし、だからといって簡単に抜いてしまってよいものでしょうか. 私はそうは思いません.たとえまったく働けなくても、その歯をいたわり、いつくしみ、大切にすることが他の歯や身体全体を健康に保つことに役立つと思うからです. |
歯科治療のゴールを補綴物の装着と考えれば、なるべく重症の歯や問題をおこしそうな歯は抜歯を勧めることになります. 一方、なるべく歯を大切にするのであれば、ありとあらゆる手を尽くして歯を守ろうとします.補綴物がもたないからと抜歯というのでは歯科医の敗北です. 患者さんが抜きたくない歯を抜歯してしまうのは歯科医ではありません. 歯抜き師以下の存在です. これからの歯科医は歯を抜かない歯科医師となるべきです. |
診療時間 | ||||||
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